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3月9日厚生労働省は令和3年度の報酬改定の通知等を発表しました。
その中には介護施設での記録やサイン等の言及もあり、「原則として電子記録を認める」とし「医療システムで現在使われているガイドラインを遵守していること」などが要件とされました。
2021年3月13日 厚労省の通知内容を追記しました。
各通知まとめ
5 雑則
⑴ 電磁的記録について
基準第31 条第1項は、指定居宅介護支援事業者及び指定居宅介護支援の提供に当たる者(以下「事業者等」という。)の書面の保存等に係る負担の軽減を図るため、事業者等は、この省令で規定する書面(被保険者証に関するものを除く。)の作成、保存等を次に掲げる電磁的記録により行うことができることとしたものである。
① 電磁的記録による作成は、事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する方法または磁気ディスク等をもって調製する方法によること。
② 電磁的記録による保存は、以下のいずれかの方法によること。
ア 作成された電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより
保存する方法
イ 書面に記載されている事項をスキャナ等により読み取ってできた電磁的記録を事業者等の使用に係る電子計算機に備えられたファイル又は磁気ディスク等をもって調製するファイルにより保存する方法
③ その他、基準第31 条第1項において電磁的記録により行うことができるとされているものは、ア及びイに準じた方法によること。
④ また、電磁的記録により行う場合は、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
⑵ 電磁的方法について
基準第31 条第2項は、利用者及びその家族等(以下「利用者等」という。)の利便性向上並びに事業者等の業務負担軽減等の観点から、事業者等は、書面で行うことが規定されている又は想定される交付等(交付、説明、同意、承諾、締結その他これに類するものをいう。)について、事前に利用者等の承諾を得た上で、次に掲げる電磁的方法によることができることとし
たものである。
① 電磁的方法による交付は、基準第4条第2項から第8項までの規定に準じた方法によること。
② 電磁的方法による同意は、例えば電子メールにより利用者等が同意の意思表示をした場合等が考えられること。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。
③ 電磁的方法による締結は、利用者等・事業者等の間の契約関係を明確にする観点から、書面における署名又は記名・押印に代えて、電子署名を活用することが望ましいこと。なお、「押印についてのQ&A(令和2年6月19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を参考にすること。
④ その他、基準第31 条第2項において電磁的方法によることができるとされているものは、①から③までに準じた方法によること。ただし、基準又はこの通知の規定により電磁的方法の定めがあるものについては、当該定めに従うこと。
⑤ また、電磁的方法による場合は、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス」及び「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」等を遵守すること。
▼各ガイドラインはこちらをご覧ください
参考
医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱のためのガイダンス厚生労働省
参考
医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第5版(平成29年5月)厚生労働省
保存が義務付けられている記録とは?
例えば訪問介護の場合では、以下のように定められています。
第39条
指定訪問介護事業者は、従業者、設備、備品及び会計に関する諸記を整備しておかなければならない。
2 指定訪問介護事業者は、利用者に対する指定訪介護の提供に関する次の各号に掲げる記録を整備し、その完結の日から2年間保存しなければならない。
一 訪問介護計画
二 第19条第2項に規定する提供した具体的なサービスの内容等の記録
三 第26条に規定する市町村への通知に係る記録
四 第36条第2項に規定する苦情の内容等の記録
五 第37条第2項に規定する事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録
他のサービスも同様の規程がありますので、詳細は各通知等をご確認ください。
保存期間や保存が義務付けられた記録
介護分野の雲煙基準で保存が義務付けられている記録は上の通りです。
訪問介護計画書等の一部記録については「e-文書法」の要件を満たせば電子保存が可能とされています。
押印が無くても良い場合とは?
詳細は「押印についてのQ&A(令和2年6月19 日内閣府・法務省・経済産業省)」を見ていただきたいが簡単に説明します。
押印があることで契約の内容や真偽が証明されると思われがちですが、そうとも限りません。
未成年が脅迫により押印した場合や、本人が正しい判断ができない状態の時、十分な説明や文書の提示がなかった契約などが考えられます。
押印がある場合は、その押印の名前や作成者等から意思の確認が取れますが、悪用された場合、印鑑証明が無い印鑑、脅迫などで半強制的な押印などは意味がないとされています。
そのため、他の方法での合意の記録でも代替できるとされています。
例えば、
1.取引先とのメールのメールアドレス・本文及び日時等、送受信記録の(請求書、納品書、検収書、領収書、確認書等なども含む)
2.文書や契約の成立過程(メールや SNS 上のやり取り)の保存
3.電子署名や電子認証サービスの活用(利用時のログイン ID・日時や認証結果などを記録・保存できるサービスを含む。)
などが上げられます。
押印に代わる合意の確認方法は具体的に1つに決まっているわけではないので、事業所の体制や運用に沿ったものを考える必要があります。
▼詳細はこちらにも書いています
【保存版】介護施設などで電子署名・電子契約を利用する要件やデメリットなどまとめ
電子保存での注意事項は?
医療で定められている記録の電子保存のガイドラインにはこのように記載されています。
書等を電子的に保存するためには、日常の診療や監査等において、電子化した文書を支障なく取り扱えることが当然担保されなければならないことに加え、その内容の正確さについても訴訟等における証拠能力を有する程度のレベルが要求される。誤った診療情報は、患者の生死に関わることであるので、電子化した診療情報の正確さの確保には最大限の努力が必要である。また、診療に係る文書等の保存期間については各種の法令に規定されており、所定の期間において安全に保存されていなくてはならない。
医療と同レベルの記録保存が求められる場合、PDFやWord等で記録を保存すると簡単に削除等ができてしまうため、記録管理の運用の徹底が必要になる。(それでも電子保存の要件を認められるとは限らないが)
また、文書等の電子保存の要件として「真正性」、「見読性」、「保存性の確保」の3つの基準が示されています。
他にも様々な要件があるか、最低限これらすべてが満たされている必要がある。
真正性とは?
保存された記録について、改変や消去の有無やその内容を確認することができること。記録作成に係る責任の所在を明らかにしていること。
正当な権限において作成された記録に対して、虚偽入力や書換え、消去等を防止し、第三者から見て責任の所在が明確である必要がある。
見読性とは?
必要に応じ電磁的記録に記録された事項を出力することにより、直ちに明瞭かつ整然とした形式で使用に係る電子計算機その他の機器に表示し、及び書面を作成できるようにすること。
電子保存されたデータそのものや、改版履歴、変更の有無などを、用意に見れる状況にすることです。
保存性とは?
記録された内容について、保存すべき期間中において復元可能な状態で保存することができる措置を講じていること。
真正性を保ち、定められた期間で見読可能な状態で保存されること。
具体的に実施する方法と注意点は?
介護ソフトを利用する
電子的記録保存となると、PDFやWordでは難しい可能性が高い。Word等では変更履歴や消去されたデータ等は安易に復旧できないし、システムに詳しい担当者が必要になる。
そうした人員の確保は難しいため介護ソフトを利用することが一番簡単です。現在あるソフトの多くは請求から記録までカバーできていることが多く、メーカによっては対応している事業種別や特徴が異なるので、「介護ソフトナビ」で無料で資料請求してみることがおすすめです。
スキャンしPDF等で保存する方法
元々紙に書いて運用していたもの、外部からの資料でシステム上に電子的に取り込みが難しいものなどは、業務効率向上の観点からPDFでスキャンすることがあります。
その際、電子データ(PDF)は元の媒体以上の信頼性にはならず、電子データとして保存した一方、元のデータ(紙)でも保存することが、真正性・保存性の確保の観点から極めて有効です。
要件
- スキャナによる読み取りに係る運用管理規程を定めること。
- スキャナにより読み取った電子情報と元の文書等から得られる情報と同等であることを担保する情報作成管理者を配置すること。
- スキャナで読み取った際は、作業責任者(実施者又は管理者)が電子署名法に適合した電子署名・タイムスタンプ等を遅滞なく行い、責任を明確にすること。
編集長
さく
介護事業所の請求や事務業務などに携わっています。